カメラマンの取材日記 手ぶらで登山がしてみたい 後編



卒業登山アタック開始!

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秋のある日、磐梯山八方台登山口に集合したチャレンジャーたち、天候は晴れ、でも途中少し位雨が降っても登山は決行します。晴れが多いシーズンだから、雨に降り込められた記憶はほとんどありません。  我々撮影スタッフ2名は、それぞれ右肩に重量約7キロの業務用ビデオカメラと、背中のリュックに電源バッテリーを数本、念のために雨ガッパとカメラ用レインカバー、それから昼食と水分と補助食品を詰め込んで、実際の体重よりも10キロ以上重くなっています。 これでは幼稚園児1人を背負ったまま、頂上までアタックする様なものです。  小学生も体力に差があるので、全体のペースは遅い子に合わせます。だから我々も何とか登り切れる。 これでもし勝手なペースで登られたら、若くて手ぶらの小学生になんか絶対に追い付けませんから。 出発前に校長先生からありがたいお話しをいただいてから、元気な掛け声を辺りに響かせて卒業登山がスタートします。我々2台のカメラも同時に登頂開始です。

ミッション・インポッシブル

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このミッションで最も困難な点、それは50名ほどいる子供たちを偏りなく、まんべんなくレンズに収める事。 だから頂上に辿り着くまでの間に、何か所かカメラの前を全員が通過するポイントを設定するのです。 そのためには、2台のカメラのどちらかが常に最前列の更に先にいないといけません。  1度私のカメラの前を全員通過させると、当然私は列の最後尾、この時もう1台のカメラは先回りして次のポイントで待機します。 その待機ポイントに到達する時には、私は子供たち全員を追い越して再び最前列の先に出なければなりません。 さもないとカメラ2台とも後ろからくっ付いて行く状態では、子供たちの背中しか撮れません。 つまり我々カメラマン2人は、登山中の行列の周囲を衛星のようにグルグル回りながら、追い越し追い越されを数回繰り返しつつ同時に登山もするわけです。なんと楽しい登山か!

山の怖さ、恐ろしさ!

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八方台登山口から15分位はハイキング気分、清々しい高原の木々を渡る風は困難の予感を忘れさせるほどに爽やかです。しかしすぐに山の表情が一変、我々に鋭いキバをむくのです。 目の前に岩石が折り重なった難所が出現、角度的にはほとんど壁です。まだ厳しい負荷に体が対応しきれない状態で、ハイキングからいきなりロッククライミングですから、心拍は急上昇、血圧も急上昇。  スタートから30分も進むと、中の湯という温泉施設跡地に到達します。広々とした池からはもうもうと湯気が立ち登り、池の畔には朽ち果てた建物が残っています。 以前は温泉客でにぎわったのでしょうが、近年は火山性ガスの噴出量が多くなり、長時間滞在できない地域になってしまいました。 人間たちの活動領域とはここでお別れ、ここから先は登山以外はできない山の領域です。  そこから約2時間半、我々カメラマンは片道で全体力を使い果たす位に動き続けます。楽しそうな子供たちや保護者のかたわらを、全身汗だく、必死の形相ですり抜けて行く男2人。 途中数か所の休憩時間でも、真夏の犬のようにうつむいてハーハー息をしているのがやっと。

そこに山があるかぎり・・・

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幾多の困難を乗り越えて体に負荷をかけ続けてゆくと、ある時ふっと全身が軽くなる瞬間があります。 我々はこれを「神が降りた瞬間」と呼んでいます。今までの苦しみがウソのように体が軽々と動くのです。 でも冷静に考えるとこれは、どこかの神経がマヒした状態、調子に乗ってそのまま突っ走ると、その先に待つのは生命体としての死。  頂上まで残り30分に位置する“弘法清水”。しかしその手前には、ガレ場と呼ばれる長距離岩石地帯が我々を待っています。傾斜も強烈、岩石を一つずつ乗り越える度に、人間の小ささを思い知らされます。 弘法清水で最後の休憩をとる子供たち、しかし我々カメラマンは先行して頂上を目指さなければなりません。 ここから頂上までは完全なフリー・アタック、一斉に解き放たれた子供たちが全速力で登って来るからです。 しかも誰が一番乗りかなんて余計な競争心をむき出しにして登って来るから、今までのペースとは全然違います。  彼らが登頂に成功した瞬間を撮るためには、我々2人は残った体力の全てを使い果たして登らなければなりません。頂上に着いたら、おそらく下山する体力は残っていないでしょう。  3時間に亘る登山のラストを飾るのは、頂上を極めた瞬間に子供たちが見せる笑顔です。 そして晴れていればまさに絶景、我々は今天空に浮かぶ孤島にいる! ああ、でもできる事なら1度でいい、カメラを持たず手ぶらで登山がしてみたい。

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